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そんなY・Tさんがまずしたことは、これまでおつき合いのあった顧客の引き継ぎ資料をつくること。「キーマン」や「競合先」「提案内容で注意しなければいけない点」「請求書の上げ方」など、1社1社異なる“社内事情”が自分の後任者に一目で分かるよう、毎晩自宅で少しずつ、企業別引き継ぎレポートを完成させていきました。
引き継ぎ資料を自宅でコツコツ作成したというのは、まだ転職先が確定しておらず、転職活動をしていることを同僚にも秘密にしておきたかったから。と同時に、いつでも転職ができるよう、準備だけは万端にしておきたいという気持ちがあったといいます。なにより、自分が辞めた後もリレーションが取れている顧客に失礼があってはいけない…この思いが強かったのです。そうして、責任感の強いY・Tさんは、誰に言われたわけでもなく資料作りを行ったのでした。
それとは逆に、意外に早く転職先が決まってしまったのがA・Wさん。人材ビジネスに興味を持っていたA・Wさんは、ある大手の人材総合サービス会社の急募求人に応募したところ内定を得て、最終の役員面接で「1カ月後に入社する」と約束してしまったのでした。在籍企業での人事制度改定の作業はちょうど佳境を迎えたところ。アシスタントとはいえ、自分が抜けることで会社に迷惑をかけることもわかっていました。しかし、「去る会社と行く会社のどちらを優先するか」を考えた時、A・Wさんが選択したのは後者の「これからお世話になる会社」だったのでした。
その後Y・Tさんは、介護施設を全国に展開する企業へと、転職が決まり直属の上司に報告。退職するまでの期間、後任の営業担当者と顧客を周り、これまでお世話になったお礼と、新しい担当営業の紹介を行いました。おしまれながらも、新天地での活躍を応援してくれる顧客に改めて感謝したY・Tさんは、転職後もメールのやり取りを続けるなど、今でも旅行会社時代の顧客との連絡が続いているといいます。もちろん、企業別レポートは後任の営業にも喜ばれ、有終の美を飾ったY・Tさんを上司も笑顔で見送ってくれました。
さて、A・Wさんのほうですが、退社までの1カ月は毎晩遅くまでの残業が続き、引き継ぎノートは1ページも書けないままに過ぎていきました。A・Wさんが抜けることがわかっていながらも「人を採用している時間もない」人事部門は、1人減ったプロジェクトメンバーで、新人事制度の改定を進めることにしました。そんな時期の退社。A・Wさんは送別会を辞退し、ただただ深く頭を下げるしかなかったのです。今は、新天地で活躍しているとはいうものの、前職企業とのやりとりはぷっつりとしまったとのことでした。