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山崎元のビジネス羅針盤

会社の倒産・リストラの時にどうするのか

2010年1月28日

会社の倒産・リストラの時にどうするのか

1月19日、JAL(日本航空)が会社更生法の申請を行った。日本の事業会社としては史上最大の倒産になる。JALの業績が奮わないことは何年も前から知られていたが、倒産することになると予想した方は少ないのではないか。今や、どんな会社も安泰とはいえないのだ、との思いを新たにする出来事だ。

本稿は、JALの経営や行政に関して論じようとするものではない。JALのような会社に勤めていて、その会社が傾いたケースで、どう考え、行動すればいいのかを一社員の立場で考えてみるものだ。

倒産は中にいても分からない

会社の事情は社員が一番良く分かるのではないかと言われることがあるが、会社全体がどうなるのかということは、個々の現場にいる社員の立場では案外分かりにくい。

かくいう筆者は、1997年に山一證券が自主廃業を発表した際に山一に勤めていたが、ぎりぎりまで外資系の会社に買収されるなど、会社が存続する形になるのではないかと思っていた。自主廃業は想像すらしなかった。会社が傾いてくると、株価が大きく下がりながら激しく売買されるようになるが、それでも「潰れるのか否か」、「潰れるとしても、いつ潰れるのか」はなかなか分からないものだ。JALの場合は、連日様々な報道がなされていたが、最終的に会社更生法の申請になるということは社員にとっても分かりにくかったと思う。

敢えていえば、資金繰りを担当している部署の社員は金融市場での自社への評価を肌で感じているので、早い段階で倒産を予想することが出来る。彼らから情報収集すると、早めに覚悟を決めることが出来るかも知れないし、転職などの準備が早くできるだろう。

JALは企業再生支援機構が支援して再建を目指すことが既定路線となっていて、山一證券の破綻の際のようにほぼ全ての社員が新たな職探しをしなければならないようなケースではないが、報道されている再建計画では、グループ社員の三分の一近くの(一万五千人を超える)人員整理が想定されており、社員の雇用が安泰というわけではない。

よもや潰れることはないと思って就職した企業がこのような事態を迎えて、不安を感じている社員が少なくないと推察する。

先ずは、人材価値の「棚卸し」をする

JALの個々の社員は、近い将来、引き続きやり甲斐のある仕事があるかも知れないし、人員整理の対象になるかも知れない。また、仕事があっても条件が悪いかも知れないし、人員整理は心配でも、実は自己都合で辞めるよりも好条件で辞めることが出来て新しい出発を切ることが出来る好機かも知れない。

今後様々な可能性があり、「絶対にこうだ」とは誰も言えないはずだ。

ここで問題になるのは、会社と自分がどうなるのかがはっきりするまで様子を見てから身の振り方を決めようと「待ち」の姿勢を決め込むと、準備不足等で損をする場合があるかもしれないことだ。

端的に言って、大きな企業の倒産や大規模な人員整理が行われる場合、転職市場には自分と似た条件の人材が大量に供給されることになる。職探しが早いか、遅いかで、有利不利が発生する事は否めない。旧山一社員の再就職も、求職活動のスタートが早い人の方が有利に決まった面があったことは否めない。

また、JALのような形を変えつつも組織としては存続するケースの場合、希望退職の募集が行われる可能性が大きい。この際、退職金の割り増しなど、有利な条件が提示されることがあるが、自分がこれから何が出来るかという目処を持っていないと、有利な条件に応募することが出来ない。

尚、希望退職に応募できない可能性も心配だが、それ以上に困ることがあるのは、先の目処が立たないのに「有利な条件があるうちに辞めよう。先のことは何とかなるだろう」と会社を辞めてしまって、その後に上手くいかなくなるケースだ。

将来、会社を離れるかどうかは別として、会社を離れた場合に自分に何が出来てどんな可能性があるのかについて検討しておくことが是非必要だ。検討したけれども、そうはならなかった、ということでも構わない。いざというときの備えが大切だ。

最初に行うべき事は、自分の人材価値を冷静に見つめ直すことだ。企業でいうと、在庫の棚卸しに近い作業になるが、あくまでも外部が人材を採用する時の目線で自分の強味・弱味を評価する。  人材価値の棚卸しの内容は、大まかに、自分の(1)能力、(2)経験、(3)人脈などのビジネス上の資産、に分かれる。

JALの社員の場合には多くの可能性があって、羨ましい面がある。

たとえば、外国語が得意な社員は多いだろうし、単に外国語が出来るだけはなく、海外の現地に詳しい社員も多いだろう。海外駐在の経験があると、同じ時期に駐在していた日本人ビジネスパーソンなどと深い交流を伴う人脈を持っているようなケースもあるはずだ。外部の目で評価した場合には、多くの可能性がある。

駐日外資系企業のマネージャーという可能性もあるだろうし、海外駐在の可能性を含んで転職を探す可能性もある。また、経理マンや広報マンといったキャリアを持っている場合に、経理や広報の仕事の能力・経験に加えて得意な外国語や地縁のある地域などがあれば、複合的な能力として大いに価値を発揮する場合がある。

筆者の元上司でも、JALのパーサー出身者がいたが、彼は外資系証券会社の駐日代表を長く務めて先般引退された。経済的にも大いに成功していたはずだ。本国の外国人幹部とのコミュニケーションが丁寧だったし、部下のマネジメントの意味でもJALの経験が生きていたようにお見受けした。  また、海外駐在での人脈は、家族ぐるみの付き合いのような深い関係になることが多いので、職探しの相談や転職先の紹介といった場面でも頼りにある相手がいる場合が多いのではないだろうか。  また、CA(キャビン・アテンダント)の女性やパーサーなど機上で働いている人たちも、サービス業として良くトレーニングされているので、ホテルやレストランなど異なる職種にもハイレベルな即戦力として通用する方が多いだろう。

JALの場合に限らず、会社が不調に陥った場合、「自分が会社を辞めたら何が出来るか」を真剣に考えてみることは重要だ。

転職市場の情報収集

しかし、「自分は何が出来るか?」と自問してみても、もう一つ具体的な可能性が想像できない場合があるかも知れない。また、「これなら出来る」と思う仕事や興味のある会社・業界があっても、求人側の事情が分からないと、先の目処の立てようがない。

こうした場合に行うべきことは、転職市場に関する情報収集をしてみることと、第三者に相談してみることだ。

転職市場の情報収集は、近年インターネットでかなりの程度できるようになった。但し、転職関係のサイトに直接載っていない案件も多いし、何よりも、第三者の目で人材としての自分の可能性を評価して貰うことが貴重だ。なるべく早い機会に、人材紹介会社のコンサルタントやヘッドハンターと会ってみることをお勧めしたい。

求人側が、採用候補者に対してどのようなポイントを気にするのかといったことも知っておきたいし、それぞれの業界・会社の人材を巡る最近の動きについても情報収集しておきたい。

また、実際に、人材の採用を検討している企業の面接を受けてみるのもいいことだ。実際の求人側のニーズに触れると刺激になるし、面接の経験を積むことも重要だ。

相手の会社に興味があれば、面接を受けてみることは決して失礼ではない。その結果、その会社に魅力を感じたら、先のステップに進めばいいし、未だ決めたくないと思えばいったん留保しておけばいい。もちろん相手のあることなので、自分の思い通りにならない場合もあるが、現実に触れてみないことには、十分な準備はできない。

筆者の場合、山一證券が自主廃業を発表する一ヶ月前くらいから友人に会ったり、ヘッドハンターに相談したりといった活動を始めてはいたが、準備不十分なままその日を迎えてしまった。短期間で再就職を決めることが出来たのは、幸運の産物だった。当時のことを今思い出すと冷や汗が出そうな気分になる。

幸運は十分な準備のある者に訪れる確率が高い。また、会社の倒産やリストラは嬉しくない経験だが、それがきっかけになって、新たな可能性に出会うこともある。倒産やリストラをチャンスに変えることは十分出来る。

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