前編では、景況感と企業の採用活動が密接な関係にあること、そして、不況期の現在も積極採用をしている企業は成長企業の可能性が高いという過去事例をご紹介しました。求人数の減少と求職者数の増加により競争率が高まっている今、人より早く行動することが差をつけるポイント。後編では、今後の景況感の予測と、いち早く不況を抜け出す業界がどこなのかを分析。ライバルより一歩先を行くための「ワンランク上」の転職術をお伝えします。
今回の不況による求人数急減の背景
今回の不況が到来するまで約70カ月間好況が続いていたため、「この状態は緩やかに続いていく」というのがエコノミストをはじめ、企業の経営陣の共通認識でした。
そのような状況で起こったのが2008年9月の「リーマンショック」。好景気を前提とした生産活動、採用、設備投資を続けていた各企業は、短期間のうちに不景気へと変わったことにより、生産ラインの稼働調整や在庫圧縮、投資縮小など様々な打ち手を急激に進めることになりました。その中で求人市場を直撃したのが雇用調整、すなわちリストラや採用規模の縮小でした。結果、新規事業を始める体力がある企業は少なくなり、新卒・中途共に採用を控えるというケースが急増したのです。
急激な雇用調整が緩和するタイミングと、その見極め方とは
では、この急激な雇用調整は、いつまで続くのでしょうか。
ポイントは、急ブレーキをかけて生産縮小をした各企業が、ブレーキを弱めるタイミングがいつかということ。というのも、多くの企業で実際の景気動向よりも過剰に生産縮小が行われるという現象が起こっているからです。
この件について、人事関連雑誌『HRmics』編集長である海老原嗣生氏は以下のようにコメントしています。
「新聞報道からも分かるように、景気の下げ止まり感が伝えられています。これは過剰な生産活動の抑制が見直され、生産が回復しつつあることの表れ。『100年に一度の大不況』から『普通の不況』に切り替わってきたと言えるのではないでしょうか。また、全世界で240兆円規模と言われるインフラ投資を中心とした景気対策が行われており、その効果も期待できます。このボリュームの資金が全世界で流通するのだから、徐々に不況期から脱出するのではないかと考えられます。」
つまり、注目すべきなのは企業の生産活動の回復時期と世界規模の景気対策がどの業界に対してどのように行われているのかということ。この2点の情報を把握しておくことで、いち早く、企業の雇用回復の兆しを掴むことができると言えるのです。
この不況期をいち早く抜け出すのは、
公的資金の投入で活気づく素材・プラント・重電などのインフラ関連企業
回復の兆しとは言われるものの、「普通の不況」に落ち着くだけで、好景気になるわけではありません。その中で、どのような業界・企業が狙い目と言えるのでしょうか。次の好景気を見込んだ成長企業の見極め方をご紹介した前編に続き、後編ではいち早く不況を抜け出す業界・企業の読み解き方を見ていきましょう。
公的資金の投入とそれに伴う各業界の景気回復の流れ
リクルートエージェント調べ
企業の在庫調整の沈静化は、不況下の需要に合わせた生産量に落ち着くというだけで、大幅に需要が伸びるわけではありません。そこでカギになるのが、先述した世界規模の景気対策です。全世界で240兆円の予算の大半が公共投資に回されると考えられ、日本国内でも大規模なインフラ整備が行われることが予想されます。
つまり、公共投資の恩恵を直接受けるインフラ関連産業を主とする業界、中でも原料を取り扱う素材・プラント・重電系の企業群が、先んじて体力を回復することが予想できます。
また、「100年に一度の大不況」による過剰な在庫調整の終了によって「通常の不況」並みに回復する可能性があるのは、IT・半導体・通信などの企業群が考えられます。
一般消費財を扱う企業群の回復は、
インフラ関連産業の企業群から半年遅れの予想
一方で、一般消費財を扱う業界・企業は、当面は不況時の状態がそのまま続くと考えられます。これは、企業のボーナスの支給額が前半年の業績に連動するため。不況の影響でボーナス額が小さいと、その中の固定支出が占める割合が高くなり、日用品への出費は自然と抑えられてしまいます。消費回復が起きるのは、インフラ関連産業でのボーナス額が回復してから、つまりそれらの企業群の業績に半年程度遅れて回復してくると考えられるのです。
景況感と業界の動向を見極め、ライバルの一歩先を行く
前後編を通して、不況だからと言って転職を諦める必要はないことを述べてきました。確かに景気と雇用の関係は切っても切り離せず、不況時の転職活動には十分な準備や企業に対する分析が求められます。しかし、前編でも述べたとおり、不況時に積極採用をする企業は将来の有望企業であり、リーディングカンパニーである可能性を秘めています。好況期にはこのような企業は見つけづらいため、不況時だからこそできる転職を実現するチャンスもあるのです。これから伸びていく業界・企業はどこなのか、自分にとって本当にマッチする企業はどこで、その企業が現在どのような経営状態にあるのか、今後どのように経営回復をしていくのか…。これらのことを、日頃から意識的に考え、調査していくことが大切です。
では、転職のプロであるキャリアアドバイザーはどのように景況感や注目企業を見極めているのでしょうか。特に技術動向の把握が求められる電気・機械系担当のキャリアアドバイザーは、次のように述べています。「全体の流れを把握するために日本経済新聞に目を通すことはもちろんですが、特に記事中で見たことがない企業名が出ているときは注目するようにしています。新しい技術や材料の話題であることが多いので、その企業名を覚えておくことはもちろん、技術のトレンドを掴むのに役立ちます。」
キャリアアドバイザーは、情報収集を継続的に行っていることに加え、日々、大量かつ最新の求人情報に接していることでどの業界のどのような企業が、今後採用を強化していくのかという情報をリアルタイムで把握しています。つまり、次に注目すべき企業・業界を体感値でも理解しているのです。
この景況感で採用枠が少ないため、優良企業の案件はまさに「早いもの勝ち」な状態。情報を早く掴み、早く応募することで内定の確率を高めることができるのです。
今は確かに求人数も激減しており転職市場は厳しい状況ですが、景気とは循環するもの。徐々に「普通の不況」にシフトし、雇用情勢も回復していくことが予想されます。
まずは「不況」という言葉に必要以上に惑わされることなく、冷静な情報収集と、希望の求人があった際にすぐに動けるような準備をすることが大切です。
情報収集の際には、世界規模の景気対策がどの業界に対してどのように行われているかと、企業の生産活動の回復時期の2点を把握しておくことで、いち早く回復の兆しを掴むことができるでしょう。
不況をいち早く抜け出す業界は、大規模な景気対策の恩恵をダイレクトに受けるインフラ事業(素材・プラント・重電系の企業群)。そこから半年程度遅れて、一般消費者向け商品を扱う企業の雇用回復が予想されます。
これらを意識して、企業や業界の状況を見極め、ライバルよりも早く転職活動をスタートさせることが重要です。情報収集には、新聞や経済誌の活用が効果的。特に技術分野のトピックスでは、見慣れない社名が取り上げられていたら要注目です。
キャリアアドバイザーは、求人の流れや量で各業界や個別企業の動向を把握しています。ご自分では手に入れづらい情報なので、効率的な転職活動のためにぜひリクルートエージェントをご活用ください。
転職活動は、これまでのキャリアの整理や情報収集などを含めると半年は必要です。業態や企業の見極め後、いざ希望する業界や企業で求人が発生した際に一番手で応募するためには、求人が出る前にある程度の自己分析を終わらせ、職務経歴書までできていることが理想。キャリアの整理の第一歩は、自分が関わってきた仕事の「棚卸し」から。「何を」「誰に対して」「どんな方法で」という視点を基本に、経験してきた業務を書き出して整理してみましょう。それを元に、その仕事を通じて身につけた能力を整理しておくと、職務経歴書も書きやすくなります。
リクルートエージェントでは、これまでのキャリアの整理をお手伝いすることはもちろん、職務経歴書の添削もいたします。競争率が高い今だからこそ、スピード感が必要な転職活動にはキャリアアドバイザーのノウハウが有効です。
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監修 海老原嗣生氏
1964年生まれ。上智大学卒業後、大手メーカーを経てリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)に入社。
現在はHRコンサルティング事業を手掛ける(株)ニッチモを立ち上げ、人事雑誌『HRmics』の創刊、および事業コンサルティングに携わっている。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。




