経営陣に伴走し集団指導体制を軌道に乗せることが、100年続く企業として「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループ」になる第一歩と語る。 (聞き手は弊社代表取締役社長・村井 満)
2009年10月8日掲載
ワタミグループについて

環境貢献・社会貢献・人間貢献をブランドとして掲げ、外食・介護・中食・農業など、様々な分野の事業に取り組んでいます
6次産業の強みを生かし、ブランド強化
――ワタミグループ創業25周年、おめでとうございます。会長ご自身、これまでを振り返ってみて、いかがですか。最初から今のような形態を考えておられましたか。
ありがとうございます。25年前、私が1軒の居酒屋の経営を始め、ワタミグループの歴史が動き出しました。創業以来、「安全・安心な食材を提供したい。おいしい料理を提供したい」という思いを常に進化させ、形にし続けた結果、現在では1次産業である農業(ワタミファーム)、2次産業である加工・流通事業(ワタミ手づくりマーチャンダイジング)、そして居食屋「和民」、語らい処「坐・和民」、炭火焼だいにんぐ「わたみん家」など、3次産業の外食事業・約620店舗を展開するまでになりました。
ちなみに、1次、2次、3次すべてを行う事業体を、6次産業と呼びます。「ひとりでも多くのお客さまから、ありがとうを集めるためにはどうすれば良いか」。そう考えながら事業経営を続けていたら、自然とこのような事業形態が出来上がっていたという感じです。
また、3次産業の出口は外食事業だけに限らずいくらでもあります。そして新たに、介護事業(ワタミの介護)、高齢者向け弁当宅配事業(ワタミタクショク)もスタート。さらに、これらの事業を展開していく上で必要不可欠である環境事業(ワタミエコロジー)にまで、当社が手がける事業フィールドは広がっています。
バランスの良い事業ポートフォリオで、経済不況下でも最高益を達成
――「100年に一度の不況」と呼ばれる昨今ですが、ワタミグループの事業への影響はいかがでしたか。
2008年のリーマンショック以降、世界的な経済不況が世界を襲いました。多くの国内企業の業績が一気に悪化しましたが、当社の2009年度3月期の連結決算は、売上高1,112億円、経常利益61億円と、過去最高益を達成することができました。
この不況期でも大きなダメージを被らなかった要因は、グループ価値の最大化を目指し、2006年に持株会社として組織を再編したことにあるでしょう。その結果、生産、加工・流通、サービスという事業ポートフォリオをそれぞれバランス良くブラッシュアップすることができ、ワタミのブランド価値の向上につながったのだと考えています。
「人」の力で、地球上で一番たくさんの「ありがとう」を集めるグループに
――今年の株主総会を境にご自身は会長に退かれたわけですが、ワタミグループはこれからどのような方向に進んでいくべきとお考えですか。
ワタミグループは、地球環境を守りつつ、安全・安心な社会のため、人として、企業としての使命・責任を果たしていきます。ワタミグループが行うすべての事業は、サービスを行う「人」が差別化要因となることを前提としており、損得ではなく善悪を判断基準として生まれてきました。その考え方はグループスローガンである「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」に集約されています。100年続く企業を目指し、これから75年間、世界中から、どれだけ多くの「ありがとう」を集めることができるか。とても楽しみにしています。
今後の業界動向と事業展開について
外食、介護、中食、農業の4つの柱で更なる成長を
――人口減少などの影響もあり、国内の外食市場の規模は縮小すると言われていますが、今後の事業展開についてどうお考えですか。
確かに、現在1兆円ほどある居酒屋の市場規模は、10年後には8,000億円ほどに減少してしまうと言われています。ただ、当社には外食事業、介護事業、中食事業、農業という、大きく分けて4つの柱があります。外食事業は基本的に可処分所得から生まれる消費ですが、介護や高齢者向けの宅配弁当は金融個人資産、年金から生まれる消費です。いずれもお客さまに高い価値を感じてもらえる商品・サービスを提供し続ければ、景気動向に左右されることなく、これからも順調な成長が望める市場といえるでしょう。
海外展開と、第4の柱・農業のブランディングを強化
――国内だけではなく、海外への事業展開についても検討されているのでしょうか。
先ほど述べた4つの事業すべてを海外へと広げていきたいと考えています。外食は、すでに香港、台湾、上海、シンガポールなど、アジアを中心とした展開が始まっており、現地のお客さまから非常に高い評価をいただいています。また、今後一番注力したいのが農業。ワタミファームのブランディング価値の向上を急いでいるところです。ただし、これらの事業以外でも、私たちが手がけることで、とびきりの「ありがとう」が集まる、私たちがやらなくてはならないと本気で思える仕事に出会えたら、その時は必ず挑戦すると思います。
売上や利益以外の価値も波及させ、グループの「存在対効果」を高めていく
――国内外での展開を考えているワタミグループが、今後、業界内で担う役割についてはどうお考えですか。
私たちは経営ノウハウをすべてオープンにします。どんどん真似していただいて結構です。当社の真似をすることでその会社の顧客が喜べば、間接的にではありますが、当社に「ありがとう」が集まっていると考えられるわけですから。もちろん費用対効果の追求は、ワタミにとっても重要な仕事です。ただ、売上や利益からは見えないところにも、世の中に波及できている当社の価値がたくさんあるのです。だから私自身も含め、ワタミグループの「存在対効果」を、これからもさらに高めていかねばならないと考えています。
ワタミグループで働く魅力

トップマネジメントから集団指導体制へ
――ワタミグループが業界内で存在感を高めていくために、今後、会長ご自身が担う役割についてどうお考えですか。
私は、今年(2009年)の6月20日の株主総会で承認をいただき、自ら社長の座を辞し、会長になりました。当社は100年続く企業を目指していますから、次の世代をしっかり育てるために、早めのバトンタッチが必要であると考えたのです。
もちろん、今以上の成長曲線を保って経営を進めていかねばなりません。だから、当面は私が代表権を持ち、CEOとして大型投資や中期経営計画等の意思決定に関与します。そのうえで、経営から一歩だけ離れ、グループの役員が、企業理念に反することなく「存在対効果」を高められるよう、そして大きな失敗をしないよう、しっかり伴走していく。言ってみれば、集団指導体制(ひとりの指導者に権限を集中させず、複数の指導者で組織を運営するマネジメント手法)ですね。そして、この新体制が軌道に乗れば、いずれ代表権もCEOの肩書も外すつもりです。
新体制になっても変わらない、ワタミが求める人材像
――ワタミグループが新体制に変化する流れの中で、ワタミグループが求める人材像は変わるとお考えですか。
体制が変わっても、当社が求める人材像はいっさい変わりません。「ワタミの考えに共感し、一緒にワタミの未来をつくっていきたいと思える人」「他人の喜びが自分の喜びとなり、その喜びが自分の幸せに重なる人」そして、「高い成長意欲を持っている人」。この3つの考え方すべてに共感できる人しか社員にしませんし、そもそも共感できない人に社員になってもらっては困るのです。
なぜなら私は、「社員を幸せにする」という目的を26歳の時に掲げ、変わらぬ経営を続けています。人の幸せはそれぞれですが、残念ながら共感のない人を幸せにする自信が私にはありませんから。ただ、ひとつだけ言えるのは、私は会長となり、伴走を終えれば、さらに別の立場を目指すつもりです。ですから、自立心が強く、自らの責任をしっかり理解して働いていてくれる、そんな人材にぜひとも当社の門を叩いてほしいと思います。成長できるきっかけと環境が、ワタミには山ほどありますから。
| 企業情報 | |
|---|---|
| 企業名 | ワタミ株式会社 |
| 事業内容 |
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| 本社所在地 | 東京都大田区羽田1-1-3 |
| 設立 | 1986年5月(創業1984年4月) |
| 従業員数 | 4,029名(グループ計/2009年4月1日現在) |
| 資本金 | 44億1,028万円(2009年3月31日現在) |
| 前期売上高 | 1,112億円(2008年度)連結 |
| 株式公開 | 東証一部 |



