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・自分の名前が肩書になる生き方のほうが面白い

2010年2月25日更新

25歳で七大陸最高峰登頂の最年少記録を打ち立てた野口健さん。その後はエベレスト、富士山の清掃登山をはじめ、環境問題に取り組む活動家として知られ、最近では日本人戦没者の遺骨収集も行っている。常にパイオニアとして精力的に行動し、自らスポンサーを獲得し続けている野口さんの仕事哲学とは?

  • 植村直己氏の本を読んで山を目指す
    植村直己氏の本を読んで山を目指す
    停学処分中に本屋で手に取った植村さんの本に衝撃を受け、片っ端から植村さんの本を読む。翌年16歳にしてヨーロッパ大陸最高峰モンブランへの登頂に成功。

    人生のスタートは勉強嫌いの落ちこぼれから

    僕は落ちこぼれだったんです。父が外交官で、子どもの頃は日本、エジプト、イギリスで過ごし、海外では現地の日本人学校に通っていました。母がエジプト人だったこともあって、僕は日本語がなかなかうまく話せなかったんです。いじめられると言葉より先に手が出てしまって、どこに行っても問題児扱い。僕が小学校6年のときに両親は離婚したんですが、母が家を出てから親父がぐれちゃってね。いつも酔っぱらって帰ってくるんですよ。そんなこともあって、中学高校の6年間、僕はイギリスの全寮制日本人学校に入れられたんです。でも勉強が嫌いで、完全なる落ちこぼれ。喧嘩ばかりしていました。なんとか高校に仮進級できるようになった直後、喧嘩沙汰で1ヶ月の停学処分になったんです。

    そのときは「落ちるところまで落ちた」と思いましたね。周囲の同級生は大手企業に勤務する親の子どもばかり。特に当時はバブル期で、「いい大学に入っていい企業に就職するのがいい人生」という風潮。自分はどうすればいいのかまるでわからなかった。そんな時に親父が、「旅にでも行って自分のことは自分で決めてこい。1ヶ月も家に閉じこもっていたって、どうせろくなことはない」と、自宅謹慎中の僕を、旅に出してくれたんです。

    そして、親父はこう言いました。「俺は東大を出て外務省に入って大使になったけど、これは単なるポストの名前であって、退官したら何も残らない。お前はどうせなら『野口健』という名前が肩書きになる生き方をしたほうが面白いんじゃないか。どうしてもやりたいことがあって、それをやるために学歴が必要ないのなら中退してもいい」と。「確かにそうだ」と思いましたね。その親父の言葉を聞いてからずっと、僕は肩書きなんか気にせず、「野口健」として今日まで生きてきました。

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  • 停学中に植村さんの本と出合い、山を目指す

    停学中は、京都や奈良を何時間も歩きながら一人旅をしました。その途中の本屋で、冒険家・植村直己さんの本を手に取ったんです。驚いたのは、植村さんが自分のことを「落ちこぼれだ」と表現していたこと。彼は世界中を放浪しながらコツコツと山に登り、その延長線上に日本人初のエベレスト登頂や世界初の五大陸最高峰登頂があったんですね。「落ちこぼれでも世界的な冒険家になれるんだ!」と、そのことが、どん底だった僕を一直線に山へと向かわせました。貪るように植村さんの本を読み、「その気になれば、何でもできる」と、確信するようになったんです。

    おかげで、停学処分後の僕は、目標ができてエネルギーがすべて登山に向かうようになり、喧嘩もパッタリとしなくなりました。大人の山岳隊に何とか入れてもらい、「高校生だからって、山で甘えはきかないぞ」と言われながらも、強引にお願いをして、植村さんが五大陸最高峰の中で最初に登頂したヨーロッパ最高峰・モンブランに登らせてもらい、高山病で苦しみながらもアフリカ大陸最高峰・キリマンジャロ登頂を果たしました。ただ、その頃の僕にとって、登頂は「こんちくしょう! 学校のみんなを見返してやる」という、落ちこぼれからはい上がるための自己アピールの手段でした。


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