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階段を一歩上るとき 昭和女子大学学長 坂東眞理子 過去の仕事はすべて財産。自分の強みは1つではない

  • 階段を一歩上るとき|34歳 理解ある上司に頼み込み研究休職の特例で留学
    理解ある上司に頼み込み
    研究休職の特例で留学
    「英語を身につけなければ」との思いから、ハーバード大学のバンティング研究所客員研究員として留学。「女性の政策決定への参加」をテーマにギフティドタレント(様々な才能を持つ人)を取材。大いに刺激を受ける。

    コアになる強みは1つとは限らない

    私が本の執筆を始めた当初は、「夜中や土日も職務に従事している同僚がいる中で、自分だけ本を書いているというのはいかがなものか」という意見もありましたが、経済企画庁に出向すると、そこでは何冊も自著を出している官庁エコノミストが大勢活躍していて、「君も本を書いてるのか」と、すごくプラスに評価されたんですね。「所変われば価値観も変わるのだ」とわかってからは、批判的な意見より、「続けた方がいいよ」という、自分にとって心地いいアドバイスに従うことにしました。その後も批判的な意見をいただくことはありましたが、守秘義務違反にならないよう、発表前の資料や政府の批判は書かない、公的意見ではなくプライベートの著作として旧姓で書くなど、自分の中でルールを決め、周囲に対して恥ずかしくない行動を取るようにしていったんです。

    その後、34歳でハーバード大学の研究員として1年間留学しました。このときは理解ある上司に頼み込んで、退職しないですむよう「研究休職」という特例を認めてもらったんです。当時の私は、「女性は国内では能力を発揮するチャンスを与えられないかもしれないが、英語ができるようになれば、海外も含めいろいろな可能性が広がるのではないか」と考えていました。自分はあまり英語が得意ではないし、好きでもなかったんですが(笑)、これがなかったら将来チャンスはないと思い込んでいたので、何としてもアメリカに行きたかったんですね。

    こうして私は、「書く」ことと「英語」と、自分のポストで得られた青少年政策や婦人政策といった「政策」情報をしっかり身につけるという、3つの「コアになる強み」を意識するようになりました。コアになる強みというと、ひとつに絞るものと捉えがちですが、ひとつに限定しなくてもいいわけですし、3つ持っていれば心強いですよね。 どんな状況におかれたとしても、どれかひとつのコアを活かせればいいと、柔軟に考えることができるようになりました。

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  • 異動してもエネルギーの10%はレパートリーの維持に

    誰でも異動先では心機一転、新しい分野で全力投球することになり、過去の仕事と切り離して考えてしまいがちです。でも、私はこれまで経験してきた事を「自分の大事なレパートリー(技量を発揮できる領域)」として、切り捨てずにしつこくメンテナンスしていました。

    ある程度自分のものとなった後のメンテナンスは、最初に身につける大変さよりはずっと楽。すでにその分野の素地や基礎知識があるので、新しい情報の上書きだけをしていけばいいのです。例えば「政策」であったら、あるデータの数値を、その時代に合った最新の数字に時々入れ替えておくとか、改正点だけをインプットする。ポストを離れると自分の元に集まらなくなる資料を、意識して集めるんですね。そうやって、私は女性政策についてフォローアップしていました。過去の仕事を潔く諦めてしまうと「私はもう、そのポストからは外れているのでわかりません」となるところも、メンテナンスを続けていれば、「それ、知っています」と答えることができます。

    もちろん、異動先で取り組む仕事に90%はエネルギーを費やすわけですが、残りの10%でレパートリーを維持する努力を継続できるかどうか。それによって10年、20年後が大きく変わるのではないかと思います。

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