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コラム転職徒然草 - 採用する側の論理編

ヨソが気になる (2010年1月12日)

自由な会社で働く人は「しっかりした仕組みのある会社がいい」と言い、制度の整った会社で働く人は「堅苦しい環境で働くのはもうイヤ」と言う。
転職エージェントという仕事をしていると、「隣の芝生は青い」という言葉を頻繁に思い出すことになる。そして、これは経営者についても同じなようだ。


我々は企業に対して人材紹介サービスの提案をすることがたびたびある。
A社は中小企業ながら広告サービス業界にあって、不況のなか業績を維持している稀少な企業。だが、我々の提案に対しいまひとつ反応が鈍く、採用をはじめるのを渋っていた。社長が「どうもピンとこないなあ」というのだ。

そんな折、我々のところに「A社に応募は出来ないのでしょうか?」と名指しで希望してきた転職者があった。メーカーの販促部で働くTさん(27歳)である。
学生時代から広告関連に興味があり、新卒時にA社に応募していた。結局、メーカーに就職する道を選んだが、いまもA社を忘れられないという。
Tさんが相談に来た時点では、A社の求人はなかった。しかし、直前にA社に提案しに行ったばかりだったので、我々はTさんの了解のもと、A社に話をぶつけてみた。

すると社長直々に「じゃあ、あくまで試しにだけど会ってみようか」という返事が。Tさんには「面接というより、あくまで顔合わせ程度かも」と伝えるも「社長と話が出来る機会なんて、そんなにあることではないので、ぜひ」ということで、晴れて両者の「面会」がセッティングされた。

Tさんは国立大卒のエリート肌の人物で、人当たりも良い。一時間弱話し込んだ社長は彼の頭の回転のはやさ・勉強熱心さにはいたく感心していたが、それでも「採用となると考えてしまう」と感想をもらしていた。
「メーカーっぽいよね。真面目。いいことだけど、この業界には合ってないように思えるなあ。この仕事には謙虚さよりも、いざとなればホラを吹けるくらいの大胆さが必要だからね」

しかし、この後、TさんはA社のライバル会社のひとつであるB社への転職に成功。そして、それを自らA社にも礼状メールで報告した。
これを知った社長は心底おどろいた様子で、我々のところに連絡をくれた。
「TさんがB社にいったって本当なの?どういう経過?B社はなんて言ってる?」
「すみません、採用されたかどうかを含め、我々の口から個人情報はお教え出来ないんです」
「ああ、そうか。まあ、本人からのメールが届いてるから間違いないんだろう。B社は同じ大手(広告代理店)から仕事をもらっているし、競合することも多いから、ひとこと挨拶くれたんだろうけど…。それにしても、あそこがTさんを採るんだ。わからないものだねえ…」

それからしばらくして、A社から人材紹介の依頼があった。Tさんの見送り理由を踏まえ、我々は大風呂敷をひろげられる、少し派手な印象の候補者をA社に紹介した。
だが、まとめて3人の面接があった日、社長は苛立った調子で、叱責の電話をよこしてきた。

「こういうタイプは社内にいくらでもいるんだよ。分かってるでしょ?Tさんみたいな人、紹介して下さいよ。頼むよ、ホントに」

どうやら、TさんがB社に採用されたのを知って、社長の採用基準の針は当初とは逆の方向に振れたらしい。ヨソが羨ましくなるというのは、どんな立場の人にも共通の心理のようだ。

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