履歴書を扱う我々の仕事では、晩婚化・少子化の流れがよく見える。30代はもちろん、40代の独身者も珍しくなくなってきており、これからの世の中、どうなってしまうのだろうと、思わす心配してしまうような実情がある。
中堅メーカーのA社はここ数年、業績好調で人材不足が続いてきた。とくにエンジニアが足りず、採用を続けてもなかなか現場の負担は減らなかった。
そんな中、A社人事が毎年おこなっている全社員ヒアリングで、複数の30代エンジニアからこんな話が持ち上がった。
「好きな仕事が出来ているので、毎日楽しい。ただ、忙しい上、開発にのめり込んでしまうタイプなので、結婚相手が見つかる気配すらない。今はそのことが一番心配」
人事が調査してみると、男性中心で多忙なエンジニアの独身率は、他部署の二倍近くになっていた。
さらに、独身の中堅社員には、重要な仕事をしているにもかかわらず、背負うもののない身軽さから、ふとしたきっかけで会社を辞めてしまっている例が何件かあり、A社の経営は「エンジニアの独身率をこのままにはしておけない」という問題意識を持つに至った。
そこで、「独身率低下プロジェクト」を率いることになったのが、A社の採用担当を兼任するKさんである。
Kさんは、「中堅といえどA社は安定企業。給与もそこそこあるし、出会いのきっかけさえあれば、すんなり決まるのではないか」と考え、お見合いパーティーに法人枠での参加を決めた。
そして「会社が費用を持つから」と、お見合いパーティーへの出席をうがなしてみたのが、合コン慣れしていないA社のエンジニアに、この手の企画はまるで不向きだった。
「派手派手しいパーティーは苦手」
「同僚がいるなかで、女性を口説くのは抵抗がある」
「仲間うちで固まってしまって、相手をみつけられない」
と、「結婚」どころか、「お知り合いになる」ことすら成功しない有様。
そこで一対一で話ができるよう「結婚支援サービス」会社と契約を結び、お見合いをすすめていったのだが、今度は女性側(支援サービス会社)からクレームが連発することとなった。
「話をするために来ているのに、何にも言わないし、聞いてこない」
「まったく話が盛り上がらなかった。こんなに酷いのは初めて」
と、女性から「お断り」の連絡が続出したのだ。
いっぽう、A社のエンジニア軍団は自分たちの不人気ぶりも知らず、「もっと、いい娘はいないのか?」と、高望みばかりしていたのだった。
我々が新しい応募者のレジュメを持っていくと、Kさんはホーと深くため息をついた。
「独身率プロジェクトのことがあるので、どうしても『配偶者 有・無』の欄に目がいくんですよねえ。今回の候補者にも独身者が多いなあ」
「だいぶ苦労されているようですね」
「自分のことを棚にあげて、ぜいたくなことばっかり言うんですよ、うちの連中は…。このままじゃあ、私の査定にも響いてくるっていうのに」
そこで、Kさんはハッと顔をあげた。
「考えてみれば、転職エージェントの仕事の中心もマッチングじゃないですかっ!私のこの苦労、分かってくれるんじゃないですか?!」
「た、たいへんですよね、お互い」
勢いにおされて、そう返事をしてしまった我々だったのだが、以降、Kさんの我々への対応はとても優しいものになっている。同情されるほど、きつい仕事ではないと思うのだが…。おそるべきは独身率プロジェクト、ということだろうか。
コラム転職徒然草 - 採用する側の論理編
独身率プロジェクト (2005年10月26日)







