転職のリクルートエージェント > 転職成功ガイド > コラム転職徒然草 > 悲喜こもごも編 > 7度目の辞意

コラム転職徒然草 - 悲喜こもごも編

7度目の辞意 (2010年1月26日)

中国、明代の詩人、袁宏道(えんこうどう)は、教授の職につくため県知事を辞めようとしたが、7度も上申を断られたという。今も昔も、職を辞するというのは大変なことらしい。
不況になれば、好況時よりも慰留・引き留めのたぐいは減るもの。だが、それでも二つ返事で辞職が認められることはなかなかない。不況期には不況期の辞められては困る事情があるものだ。

中堅機械部品メーカーA社のエンジニアのYさん(36歳)は、一昨年に退職の意向をかためたが、そのつど慰留にあい、今年まで転職活動が延びてしまったという。

Yさんの足踏みは、不況だから大丈夫だろうと甘く見て、転職活動前にA社の上司(役員のひとり)に自分から辞意を伝えてしまったことに始まった。
「今まで忙しくて転職を考える余裕がありませんでしたが、金融ショックで仕事も減るでしょう。ここで転職先を見つけたいと思います」
「仕事内容に不満があるのは前から知っていた。たしかにA社にいるかぎり解決出来ない問題…。けれど、業界内で合併再編の噂が出ているんだ。ここだけの話、吸収合併ということになれば、転職することなしに希望をかなえることが出来るかも知れないぞ」

機密情報らしきものを聞いて、Yさんも「それなら、しばらく待ってみようか」という気持ちになったわけだが、いつまでたっても合併の追加情報はやってこない。
そこで再度辞意を伝えると、今度は社長じきじきの慰留が入った。
「いま君に辞められたら、社内の士気は間違いなくガタ落ち。エンジニアの求人も激減しているようだし、もう少しだけ待ってからにしてもらえないだろうか?」
10年以上お世話になった会社、しかも社長から頭を下げられてはYさんも「暫くのあいだなら…」と応じるしかなかった。

2ヶ月後、そろそろ頃合いだろうと思って、転職準備にとりかかろうとした矢先、今度は技術提携しているB社から慰留があった。Yさんが特に親しく付き合ってきたエンジニアが多くいる会社だ。
「これまでの仕事でYさんと良い関係が出来たと思っている。この関係がなくなるのは大きな痛手。もし次の開発でA社との仕事がなくなったら、B社は倒産してしまうかもしれない」
Yさんも、A社の誰かが手を回してこう言わせているのはすぐに察しがついた。だが、B社の経営は実際に苦しく、A社との協同開発をあてにしているのは本当のことだった。
「では、次のプロジェクトの概要が固まるまで…」

さらに1ヶ月、開発プロジェクトにB社が参画するのを見届け、ようやくこれで動けると思いきや、Yさんは現場でも強い慰留に直面することになった。開発責任者はYさんの手をとって、必死の説得をした。
「景気が良かった時は、誰かが辞めるかも知れないと思って予備の人員を用意していた。でも今はコスト面もあってギリギリの人員。まして10年選手の君に辞められたプロジェクト自体頓挫してしまうかもしれない」
こうして人の良いYさんは結局、約4ヶ月間、後任が決まるまで自分の転職を棚上げにしたのだった。
会社に辞意を伝えること計7度、約1年半を棒に振ったYさんは、「今年は何を言われても転職します」と意気込んでいる。

辞めたくないのに辞めざるを得ない人がいる一方で、Yさんのように辞めたくても辞めさせてもらえない人がいる。この国の雇用もだいぶ変わってきたようだ。いいのか、悪いのか。難しいものだ。

カテゴリー一覧

転職の理由や希望はひとそれぞれです。豊富な経験を持ったキャリアアドバイザーがあなたの状況に合わせて転職をサポートします。

転職支援サービスに申し込む【無料】