昨年12月、システムエンジニアSさん(41歳)はやるせない気持ちを抱えて転職活動にあけくれていた。
Sさんが勤務していたのは金融系システムサービスA社。他社と提携して新しいサービスの展開を予定していたが、10月に未曾有の金融危機でプロジェクトは頓挫し、A社は大きな損害を被ってしまった。
実質上の責任者だったSさんは、その後、厳しく責任を問われた。
「ここまで損害が大きくなったのは、リスクも考えずプロジェクトを大きくしすぎた、彼(Sさん)のせいだ。無謀と言わざるを得ない」
SさんをA社に引き抜いたA社社長、その社長のあからさまな責任転嫁の言葉を聞かされ、Sさんは人間不信に陥った。
「10年以上も期待に応えてきたのに、いきなり『ケジメをつけろ』だなんて…」
我々のところで、Sさんは体裁をつくろおうともせず、組織の無情を恨んでいた。
Sさんは転職活動をすぐに始めたが、時期が悪すぎて、結果はなかなか得られなかった。12月になり、街がクリスマスめいてきても面接の予定はポツポツといったところ。
「こんな時期に職にあぶれて転職なんて、情けないです」
家族に気丈なところを見せなくてはならない分、我々には弱音を吐くことが多くなっていたのかもしれない。Sさんは「街にあふれるイルミネーションをみるほど、気持ちがふさぐ」とメールでこぼしていた。
クリスマス間近になったある日、Sさんは独立系システム開発B社の面接を受けることになった。技術担当者と人事担当者との面接を無難にこなした後、Sさんは社内を案内された。すると、サンタクロースに扮した男性が、社内を練り歩き、各所で歓声があがっているのが見えた。
「何かのイベントですか?元気のある企業は雰囲気が違いますね」
Sさんが問いかけると、ガイド役の人事担当者は恐縮しながら言った。
「お見苦しいところをお見せして…。実はあれが弊社の社長でして」
その日、社長面接の予定はなかったが、Sさんの存在に気づいた社長は彼を個室に招き入れた。
「まさかトップ自らサンタ役とは、驚きました」
縦社会につかっていたSさんは、心からそういった。
「他社よりはましかもしれないけれど、うちの業績もかなり落ち込んでいる。それに、うちはまだまだ小さな会社なのに、中核だったエンジニアが少し前に辞めてしまって、社内の動揺が大きいんです。こうやって盛り上げないと、士気もあがらないんですよ」
2人はそれから30分ほど、話し込んだ。
Sさんは後にその時のことをこう振り返っている。
「A社の経験がトラウマになり、B社まではずっと身構えて、自分のスキを見せないように面接をしていました。でも、あの時は率直になれた。サンタクロース相手にビジネスの話を真剣にしている自分が、なんだかコメディのように思えてきて、自然に肩の力がぬけたんです」
Sさんは続ける。
「クリスマスに職探しなんて悲しいと思う人は多いでしょうが、私はあのタイミングでなかったらB社で採用になっていなかったでしょう。あの日、あの時間に面接が組まれたのは、私にとって奇跡でした」
今年もクリスマスがやってくる。
「なんで、こんな時に仕事探しを…」
そう考えてしまう人が今年も多くいるに違いない。しかし、「こんな時」だからこそ、Sさんに起きたような奇跡が起きるかもしれない。
多くの人に、素晴らしい奇跡がおきますように。転職する人、しない人、すべての人にメリークリスマス。
コラム転職徒然草 - 悲喜こもごも編
サンタとの面接 (2009年12月22日)







